精神科まとめ
§不安障害
<GAD>
*概説
制御不能な、複数の事柄に対する過剰な不安
男女比=1:2
*病歴/身体所見
1日中にわたる不安が6か月以上続く
3個以上の身体症状: 落ち着きのなさ、疲れ、集中力低下、イライラ、筋緊張、睡眠障害
*語呂: CRIFTS
C: difficulty concentration
R: restlessness
I: irritability
F: fatigue
T: Tension(Muscle)
S: sleep disturbed
*治療
①短期間療法
BDZ: 即効作用を期待できるが、依存や耐性の問題があるので、SSRIを用いて徐々にtaperingしていく。
→急激な休薬は、アルコール離脱症状様の症状を惹起する
②長期療法
1. 生活を変化させる
2 精神療法
3. 薬物療法: 1st; SSRI, 2nd~;buspirone, Venlafaxine(SNRI)
4. 患者教育は必須
*Key Fact: BuspironeもMAOIと併用すべきでない
<OCD>
*概説
強迫観念や衝動が社会生活に支障をきたすほどである。しばし難治性である。
典型的には、後期青年期もしくは、早期成人期に生じる
男女比=1:1
*病歴/身体所見
1. 強迫観念: 持続性の望まない侵入的な(intrusive)考え、衝撃、イメージのこと。明らかな不安や困難をもたらす。
2. 強迫行動(Compulsions): 強迫観念を中和させる、何度も繰り返す精神行動を認める(洗手、儀式、counting)
3. 患者は、強迫行動が過剰で、非論理的であることを自覚している
Cf. Obsessive-compulsive personalityとの鑑別点
4. 患者自身に治療意志がある
*治療
薬物療法: 1st; SSRI
2nd. CBT
患者教育が強く推奨される(imperable)
*Key Fact: OCDの患者は内科ではなく皮膚科が初診であることが多い⇒手の洗いすぎによる皮疹
*D/D OCD vs OCPD(OC personality disorder)
| OCD | OCPD |
特徴 | 強迫観念と強迫行動に特徴づけられる | 患者は過度に良心的(conscientious)で、融通が利かない |
鑑別点 | 強迫観念と行動の異常性を自覚しており、治療したいと考えている | その性質が問題であると考えていない |
<Panic障害>
*概説
繰り返される予期せぬパニック発作を認める。
男女比=1: 2~3、平均発症年齢は25歳だが全ての年代で発生しうる
広場恐怖を30-50%に認める(公衆の場に一人でいること)
*病歴/身体所見
①パニック発作の定義
不連続の(discrete)激しい恐怖や不快感を認めるもの。少なくともいかにあげるもののうち4つを10分以内に満たす。
1.頻呼吸 2.胸痛 3.動機 4.発汗 5.吐き気 6.震え 7.めまい 8.死の恐怖 9.発狂の恐怖 10. 離人感 11. ほてり(hotflash)
*語呂: THe PAANIC DDD 4/11以上
T: trembling
H: hot flash
P: palpitation
A: afraid of dying, afraid of going crazy
N: nausea
I: inspiration↑
C: chest pain
D: depersonalization, diaphoresis, dizziness
②特異的な所見
1. 口部周辺または先端部の異常感覚(paresthesias)
→頻呼吸と低酸素血症をもたらす
2. 1か月以上にわたり、次回発作や発作によりおこるだろう行動変異に予期不安を感じている
③広場恐怖の有無をチェックする必要がある
→治療方針が変わってくるため
*治療
①短期的治療
BDZ(eg. Clonazepam)は即効性を期待される→徐々に減薬
②長期的な治療
1. CBT
2. 薬物療法: 1st. SSRI 2nd. TCAs
*Key Fact: BDZ系としてAlprazolamを使うことがあるが、半減期が短いので、患者はその日のうちに軽度の退薬症状を呈することがある
*Key Fact: Panicと鑑別が必要な疾患
①身体疾患: 狭心症、MI、不整脈、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫
②精神疾患: 薬物による不安、GAD、PTSD
<社会不安とspecific phobia>
*概説: 2つの区別
①社会不安
社会や、聴衆の前で発表するような状況で惹起される
特異的な、発表や公衆の面前での尿で惹起されたり、全般的には社会関係で生じる
青年期に好発する
②Specific phobia×
恐怖の対象や状況に暴露された際に生じる: ex; 動物、高さ、飛行機
小児期好発
*病歴/身体所見
事柄や状況を避けようとして、社会生活に重大な問題を抱えている
その恐れが過剰であることを自覚している
*治療
①Social phobia×
CBT, SSRI, 低用量BDZ, βブロッカー
②Specific phobia
1st: CBT
2nd: 支持的、家族的、insight-oriented psychotherapyなど
<PTSD>
*概説
生命を脅かすような極端な恐怖体験を契機に発症する
*Key Fact: 性別の原因順位
Male 1st: レイプ 2nd: 兵役
Female 1st: 小児期の虐待 2nd: レイプ
*病歴/身体所見
①特徴的な所見:
語呂: RAN Away; Repeating, Avoiding, Non-reaction, Awakening
1. 何度も、その出来事を繰り返し思い出す(ex: nightmare)
2. トラウマを惹起するような刺激を回避する
3. 無反応(愛情剥奪、性的冷感)
4. 覚醒度亢進(過覚醒、過度の驚愕)が機能的障害をもたらしている
②経過
1か月以上症状が続く
③補助的所見
生存者としての罪悪感、イライラ、集中力低下、記憶喪失、睡眠障害、人格変化、薬物乱用、うつ、自殺
*治療
①短期治療×
不安に対処する: βブロッカーとα2アゴニスト(ex: クロニジン)なども含む
②長期的治療
薬物療法: 1st; SSRI, 2nd~; buspirone, TCA and MAOI
BDZも効果的だが、PTSD患者は薬物依存になりやすいので可能な限り避けること
他: 精神療法やグループセラピーは有用である
Cf. GAD: 1st; SSRI, 2nd~;buspirone, Venlafaxine
*Key Fact: BDZは薬物乱用歴のある人にも避けること
<不安障害の薬物治療まとめ>
薬物分類 | 適応 | 副作用× |
SSRI | 1st line for GAD, OCD, PTSD | 吐き気、消化管の不快感、睡眠障害、性的不能、興奮(agitation) 語呂: Sex, Sleep, Rising, Intestine |
Buspirone | GAD, OCD, PTSD | 慢性使用による痙攣 耐性、依存性、退薬症状は認めない Because U Seizure |
βブロッカー | 行動不安、PTSD | 徐脈、低血圧 |
BDZ× | 不安、不眠、アルコール退薬症状、筋肉ケイレン、night terrors, sleepwalking | 睡眠時間減少、乱用の危険、耐性、依存性、脱抑止→混乱 |
フルマゼニル(GABAに対する競合的アンタコニスト) | BDZ中毒への拮抗薬 | Resedation: 吐き気、眩暈、嘔吐、注射部の痛み) |
Cf. night terror vs nightmere
①Night terrors
頭が休息中の深い眠りの時に起こり、覚醒することなしに恐怖の感情をコントロールしている中枢が働いてしまう→患者は覚えていない
②Night walking
小児期の男子に多くNREMの深い時期に起こる→患者覚えていない
NREM=入眠してから2~3時間後
③Night mere
レム睡眠中に起こる→患者は覚えている
§認知障害: 記憶、見当識、判断、注意
<認知症>
*概説
認知力の全般的な低下
意識レベルは安定している D/D: deliriumでは低下
85歳以上に好発
Alzheimer病(65%)、血管性認知症(20%)、ほかの原因は語呂
*語呂: 認知症の他の原因; DEMENTIAS@
D: degenerative diseases ( parkinson’s , Huntington’s)
E: endocrine( thyroid, parathyroid, pituitary, adrenal)
M: metabolic( alcohol, electrolytes, vitaminB12, glucose, heptic, renal, wilsons)
E: exogenous(heavy metals, carbon monoxide, drugs)
N: neoplasia
T: trauma(subdural hematoma)
I: infection(meningitis, encephalitis, endocarditis, syphilis, HIV, prion, lyme)
A: affective disorders(pseudodementia)
S: stroke/structure (vascular, ischemia, vasculitis, NPH)
*病歴/身体所見×
DSM-Ⅳでは、以下の5つの条件をすべて満たした状態を認知症と定義する。
①記憶障害がある
②失行apraxia,失認agnosia,失語aphasia、実行機能障害executive functionのどれかがある
③上記のため社会生活に支障をきたす
④上記の状態に脳などの身体的な原因があるか、あると推測できる
⑤意識障害はない
Cf. 人格や気分や行動の変化はよく認める
Cf. executive function: 計画を練ったり、組織立てたり、抽象化したりする能力
*語呂: “M”EAAA”A”SoLo”ES
Memory loss, Executive function Agnosia Aphasia Apraxia, Alert ,Social Loss, Encephalo s,
*診断
①綿密な既往歴と身体所見をとる
→MMSEを施行する
②原因がはっきりした認知症を除外する必要がある
→CBC, RPR, CMP, TFTs, HIV, B12, folate, ESR, UA やCTやMRIをとること
*Key Fact: 認知症にせん妄が合併することは良くあることだ
*治療
①環境: 同じような生活環境を維持する
②薬物療法
1. コリンエステラーゼ阻害薬
2. 低用量の抗精神病薬を精神症状・興奮(agitation)に使うことがある
→ただし、心血管系機能障害のリスクを上げる可能性がある
3. BDZは避ける: 脱抑制や混乱をもたらす
③その他
家族、caregiver、患者の教育と支持は必須(imperative)である。
*D/D delirium vs dementia
Variable | Delirium | Dementia |
注意力のレベル | 損傷されている(impaired) | 用心深い(alert) |
Onset | 急性 | 緩徐進行性 |
経過 | 振動性fluctuating “sundowning” | 進行性に悪化する |
意識 | 混濁 | 十分 |
幻覚 | 認める(視覚と触覚) | 高度に進行したものの30%に認める |
予後 | 可逆性 | 15%のものは治療可能のもの 他は不可逆 |
治療 | ①原疾患の治療 ②低用量の抗精神病薬 ③環境の変化 | ①コリンエステラーゼ阻害薬 ②低用量の抗精神病薬 ③環境の変化 |
<せん妄delirium>
*概説
短期間で進行する認知の変化を伴った意識障害
小児、老人、入院患者(eg. ICU精神病)はリスクである
主な原疾患は語呂: I WATCH DEATHであらわされる
*語呂: I WATCH DEATH
I: Infection
W: Withdrawal
A: Acute metabolic, substance Abuse
T: Trauma
C: CNS pathology
H: Hypoxia
D: Deficiencies
E: Endocrine
A: Acute vascular/MI
T: Toxins/ drugs
H: Heavy metals
*病歴/身体所見
①急性のwaxingとwaning意識障害(lucid intervalsもある)
②知覚(perceptual)の障害(hallucinations, illusions, delusions
③好戦的combative, 被害妄想的、昏迷状態stuporous
④集中力低下、睡眠サイクルの逆転、夜に症状悪化(sundowning)
*診断
①バイタル、パルスオキシメーター、血糖値をチェックする
②最近の治療薬をチェックする(ネルコチックス、抗コリン薬、ステロイド、BDZ)、薬物の使用、前回のエピソード、既往歴(medical problems)、臓器障害(肝、腎)の有無、感染症(occult UTI is common in the elderly; check UA)
③ラボデータと画像診断をオーダーする
*治療
①原疾患の治療
②脱水状態や電解質異常を補正する
③感覚環境を最適化する: ある程度の視覚刺激や聴覚刺激を与える
④低用量の抗精神病薬(ハロペリドール)
⑤身体拘束具は保守的に使用すること
§気分障害: 感情障害(affective disorder)
<Major depressive disorder (MDD)>
*概説
1個以上の大鬱病性エピソードにより特徴づけられる
男女比=1:2
生涯罹患率=15-20%
20歳代半ばに好発症し、年齢とともに罹患率が増加する
慢性疾患と慢性stressはリスクとなる
患者の2-9%が自殺する
*病歴/身体所見
①診断基準
抑うつ気分、もしくは性的冷感があり、
2週間に渡りSIGECAPSの内5個以上の徴候や症状を認める
S: sleep (hypersomnia or hyposomnia)
I: Interest (loss of interest or pleasure in activities)
G: Guilt (feelings of worthlessness or inappropriate guilt)
E: Energy(↓) or fatigue
C: Concentration(↓)
A: Apetite(↑or↓) or weight(↑or↓)
P: psychomotor agitation, retardation
S: suicidal ideation
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------
②うつ病のsubtypes
1. Psychotic features
典型的には気分と一致したdelusions/hallucinatins
2. Postpartum
Postpartumの1か月以降に発症する。10%に再発のリスク。精神症状は共通している。
3. Atypical
体重増加、過眠傾向、rejective sensitivity
4. Seasonal
特定の季節に生じる、冬に多い。光線療法に良く反応し、抗うつ薬には±。
5. Double depression
大うつ病が、循環気質の患者に発症したもので予後が悪い。
*治療
①薬物療法
50-70%の患者に効果的
×効果が表れるまでに2-6週間かかる、6か月以上取り続けること
TCAの副作用=TriC’s; convulsion, coma, cardiac arrhythmias
②精神療法
薬物療法と同時に施行することで、より有効となる
③ECT電気療法
安全で、非常に効果的な治療法: 難治性うつ病やpsychotic depressionに適応がある
治療抵抗性の躁病や精神病にも適応がある。通常6-12 treatmentsを必要とする。
副作用: 発作後ケイレンpostictal、不整脈、頭痛、順行性健忘(anterograde)
×禁忌: 最近のMI/卒中、頭蓋内に塊があること、麻酔高リスク者(相対的禁忌)
④光線療法: 季節性うつ病に有効
⑤Trans cranial magnetic stimulation(TMS)
ECTほどではないが、有効である。
*抗うつ薬の適応と副作用
Drug class | Example | 適応 | 副作用 |
SSRI | Fluoxetine, sertraline, paroxetine, citalopram, fluvoxamine | うつ病、不安障害 | ①性器能への影響、消化管障害、不眠、振戦、下痢 ②セロトニン症候群 @③パロキセチン: 胎児に肺高血圧を起こしうるので、妊婦には避ける paro=PHT |
Atypicals × | Bupropion, mirtazapine, trazodone | うつ病、不安障害 BMタブリュー M メタボ | ①Bupropion: ケイレンの閾値↓、性機能への影響少ない、ケイレンリスク者の投与は禁忌(ANなど) ②Mirtazapine: 体重↑、鎮静 ③Trazodone: 高度鎮静、priapism |
SNRIs | Venlafaxine, Duloxetine | うつ病、不安障害、慢性疼痛 | Venlafaxine:拡張期の高血圧 ventricular |
TCAs | Nortriptyline, Desipramine, amitriptyline, imipramine NO DAI | うつ病、不安障害、慢性疼痛、偏頭痛、 夜尿症imipramin | 心血管系への作用 ODの時には3-4日ICUでフォローする 抗コリン作用 |
MAOIs | Phenelzine, tranylcypromine, selegiline( a patch form is available) PTSD | うつ病、特に非典型的うつ病 PTSD | チアミン食(aged cheese, red wine)とともに摂ると高血圧緊急症の恐れあり。 性機能への副作用、起立性低血圧、体重増加 |
語呂: SSRI; SSパロッテフルオッキセルトラ、フルボッキサシタロ
Cf. 夜尿症×
:4~5歳以後に少なくとも月に1回以上の夜尿を認めるもの。乳児期から継続=1次性à TCAs(imipramine), デスモプレッシン
*Key Fact
SSRIをやめMAOIに切り替える際には最低でも2週間開けなければならない
Ex: フルオキセチンなら5週間あける
*D/D
疾患名 | 鑑別点 |
器質的疾患による気分障害 | 甲状腺機能低下症、パーキンソン病、脳腫瘍、腫瘍一般、卒中(特にACA卒中)、認知症、副甲状腺異常 |
薬物による気分障害 | 非合法薬、アルコール、降圧薬、ステロイド、OCPs |
適応障害× | 特定のストレスイベントの3か月以内に発症 大うつ病と似たエピソードを呈するが5項目を満たさない |
通常の死別bereavement | 機能障害や希死念慮はそれほど重篤でない 通常は6か月以内、1年以内には寛解しているべきである Illusions/ hallucinations of the deceasedは、患者がそれを幻覚と認識しているなら病的ではない |
循環気質dysthymia | 軽度の抑鬱気分が2年以上続いている 通常治療に抵抗性である |
*D/D Postpartum disorders
Subtype | Time of onset | Symptoms |
Postpartum blues | 出産2週間以内 | ①悲観、抑鬱、不安定な感情 ②子供を傷つけるという思考はない |
Postpartum psychosis | 出産2-3週間後 | ①Delusions と鬱 ②子供を傷つけようと思うことがある |
Postpartum depression | 出産1-3か月後 | ①Delusion, depressionに加えて、睡眠障害や不安を抱える ②子供を傷つけようと考える |
*語呂: サイコ兄さん(2-3wks)→postpartum psychosisが2-3週でそれより前がブルースであとがデプ
<Bipolar disorder>
*概説
タイプ1の有病率は約1%でタイプ2は約3%である。
男女比=1:1、家族歴がある場合にはリスクは増加する。
20歳に好発症し、加齢とともに発作頻度が増していく。
10-15%に自殺を認める
*Subtypes
①BipolarⅠ: 少なくとも1回以上の躁病エピソードか混合病エピソードを認める(full manicがあればよい±MDEs)
②BipolarⅡ: 少なくとも1回のMDEと1回の軽躁病エピソードを認める.
( full manicエピソードと混合病エピソードを認めない)
③Rapid cycling: 1年以内に4回以上のMDE, manic, mixed, hypomanicエピソードを認める。
④Cyclothymic: 2年以上にわたり軽度の軽躁・抑うつ期間が持続する。
*Key Fact: MDEsはbipolarⅠでもⅡでも認めうる
*病歴/身体所見
症状の語呂= DIG FAST
歓楽的な行動に過度にのめりこむ
抗うつ薬が躁病の発症起点になることがある
*語呂×
D: distractivity(観念奔逸)
I: insomnia
G: grandiosity(self-esteem↑) /more goal directed
F: flight of ideas(racing thoughts)
A: activities/ psychomotor Agitation
S: sexual indiscretions(無分別)/ other pleasurable activities
T: talkactiveness/ pressured speech
*診断×
①躁病エピソード: 1週間以上にわたる、持続的な気分高揚感、expansive or irritable moodに加えて、3個以上のDIG FAST症状を認める。
②精神病症状: 躁状態で共通してみられる。
③症状は器質的疾患や、薬物によるものではなく、機能や社会生活に支障をきたしている。
④軽躁病: 躁病に似ているが、明らかな機能障害や精神症状を認めず、入院を必要としない。
*治療
①双極性障害のmania
1. 急性期: 抗精神病薬
2. 維持期: 気分安定薬
3. BDZ: 難治性の興奮に対して使用する
②双極性障害のdepression
1. 気分安定薬±抗うつ薬
→躁転化を防ぐために、必ず気分安定薬から投与する
2. 難治性の場合にはECTも考慮する
③重度のうつ状態や、bipolrⅡでうつ症状が優位なもの
抗うつ薬に、低用量のリチウム(血中濃度0.4-0.6mEq/L)を合わせて投与する
*気分安定薬×
Drug class | 適応 | 副作用 |
Lithium | 気分安定薬の1st choice 急性躁病に抗精神病薬とともに使われる 抗鬱治療の補強(augmentation)に使われる | 口渇、多尿、糖尿病、振戦、体重増加、甲状腺機能低下症、吐き気、下痢、ケイレン、催奇形性(1st trimesterに使うと)、ニキビ、嘔吐 治療域が狭いが、TDMできる 血中濃度>1.5mEq/L; 失調、構音障害、せん妄、急性腎不全→腎機能低下者は避ける |
Carbamazepine | 気分安定薬の2nd line 抗痙攣薬、三叉神経痛の治療薬 | 吐き気、皮疹、白血球減少症、AVブロック、AA(CBCを2週間ごとにモニター)、SJS |
Valproic acid | BPD(borderline personality d), 抗痙攣薬 | GI side effect(吐き気、嘔吐)、振戦、鎮静、脱毛、体重↑ 稀に: 膵炎、血小板減少症、致死的肝障害、無顆粒球症 |
Lamotrigine | 気分安定薬の2nd line, 抗痙攣薬 | 霧視、GI distress、SJS、皮疹をモニターするためにゆっくり投薬 |
§人格障害
人格とは、その個人の一連の感情的・行動的特色であると定義される。また人格は一般に一定のもので、予測可能なものである。
人格障害とは、ある個人の特色が頑なで、社会に適応したものでないために、社会生活に悪影響を及ぼしている状態のことである。成人期早期から発症する。
*語呂: 人格障害の特徴
M: maladaptive不適応
E: enduring永久的な
D: deviate from cultural norms 社会的規範から逸脱する
I: inflexible 不柔軟
Cs: cause impairment in social or occupational functioning
*診断
①態度、気分の変調性、滑動性そしてストレスへの対応方法を尋ねること
②患者は責任・役割そしてストレスへの対処法に慢性的に問題を感じている。患者も、自分自身の行動を否定していたり、行動パターンを変えることに困難を感じていたりする。
③しばし精神的ケアを拒否する
*人格障害の徴候と症状

<Schizophrenia>
*概説
幻覚、妄想、無秩序な思考、異常行動に加え、意識清明下での社会機能の著しい障害を認める。
①疫学
1%に認め、男女比=1:1
発症のピークは男性(18-25)が女性(25-35)より早い
冬や早春に生まれた子供に発症しやすい
1st degree relativesにリスク高い
患者の10%が自殺する
②病因
ドーパミンのコントロール障害であると考えられている
CTとMRIにて異常を認める: 脳室拡大、皮質体積の減少
*分類
①Parnoid
妄想(しばし迫害妄想)と幻覚を認める。認知機能は通常保たれている。最も予後がよい。
②Disorganized
思考パターンと行動が高度に崩壊しており、感情の平板化も認める。最も予後悪い。
③Catatonic
過剰な運動と、運動停止を認める。無言症、waxy flexibility(奇妙な姿勢で止まる)、極端なネガティブ思考、Echolalia反響言語, echopraxia反響動作も認める。
*病歴/身体所見
①診断
6か月以上にわたり、継続的に6項目以上の社会的職業的機能障害を認める
1. 陽性症状: a. 幻覚(多くは幻聴)、b. 妄想 c. 無秩序な話d. 奇怪な振る舞い(bizarre) e. 思考障害
2. 陰性症状: a. 平板感情 b. 感情反応、c. スピーチ下手、d. 目的を欠いた行動、e. 性的冷感
②鑑別疾患
1. Schizophreniform disorders(シゾ風の)
統合失調症の症状を認めるが、症状持続が6か月に達さない
2. Schizoaffective disorder(シゾadding)
統合失調症に加え、MDDかBPDの症状を認める
疾患名 | 期間、特徴 |
精神病 | Brief psychotic disorder: 1day~1month Schizophreniform disorder: 1~6months Schizophrenia: 6months~ Schizoaffective disorder: Schizo+ MDD or BPD |
人格障害 | Schizotypal: magical thinking(SchizoThinking) Schizoid: loners |
*治療
①抗精神病薬: 長期間のフォローアップ
②支持的療法: 社会スキルのトレーニング、vocational職業リハビリ、疾患教育
*抗精神病薬
Drug class | 例 | 適応 | 副作用 |
定型抗精神病薬 × | ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、チオリダジン、クロルプロマジン クロールのプロフルチンドロまみれでハロー | ①精神疾患、急性の興奮、急性のマニア、トゥレット症候群 ②統合失調症の陽性症状により効果的(D2受容体をブロックすることで) ③コンプライアンスの悪い人は非定型薬や、depot form(ハロペリドール、フルフェナジン)への変更を考慮する | ①EPS ②抗コリン作用 ③NMS →ICUで支持療法を提供し、ダントロレンかブロモクリプチンを投与する |
非定型× | ①クロザピン、リスペリドン(長時間作用型のdepot injectionが可能) ②クエチアピン、オランザピン、ジプラシドン、アリピプラゾール | ①統合失調症の1st lineである(EPSと抗コリン作用少ないので) ②クロザピンは重度の治療抵抗性タイプと重症遅発性ジストニアに対し限定的に使われる | ①体重増加、DM2、過眠、鎮静、QT延長症候群 ②無顆粒球症: 毎週CBCを行う必要がある(clozapine) |
*EPSと治療法
Subtype | Description | Onset | 治療法 |
Acute dystonia× | 長期にわたる、痛みを伴った筋肉の収縮やspasm(斜頸torticollis, 眼球上転発作oculogyric crisis) | Hours | ①急性治療薬: 抗コリン薬(ベンズトロピン、ジフェンヒドラミン) ②予防投与: 抗コリン薬(ベンズトロピン) |
Dyskinesia | 偽性パーキンソニズム(ひきずり歩行shuffling gait, 歯車様筋固縮cogwheel rigidity) | Days | ①抗コリン薬(ベンズトロピン)かドーパミンアゴニスト(アマンタジンを投与する) ②神経抑制薬の投与量↓または、休薬をする(耐性完成しているならば) |
Akathisia | 主観的、客観的落ち着きなさ →悩んでいると思われる | Weeks | ①神経抑制薬を減量し、βブロッカー(プロプラノロール)を試す ×②ベンゾジアゼピンか抗コリン薬が効果的かも →病態に則するか、鎮静するか |
Tardive dyskinesia | 非自発的な、無痛の口部の動き。慢性のdopamine阻害によるdopamine感受性亢進によると考えられる。 50%が不可逆的 | Months | ①神経抑制薬を投与中止するか、減量する; より適切な治療薬に切り替える(クロザピン、リスペリドンなど) ②抗コリン薬を投与したり、神経抑制薬を減量することは、当初dyskinesiaを悪化させるかもしれない |
§Childhood and Adolescent Disorders小児期と青年期の疾患
<Attention-Deficit Hyperactivity Disorder (ADHD)>
*概説
持続的な著しい不注意と、過活動性を特徴とする。男児に多く、典型的には3-13歳の間で認める。しばし家族性を示す。
*病歴/身体所見
診断には6か月以上にわたり、少なくとも2つの状況(家、学校など)で、①不注意と②過活動性のカテゴリーから6個以上の合致を認め、それにより重大な社会的、学業的問題を抱えていることが必要である。いくつかの症状は7歳に至るまでに発生している必要がある。
①不注意:
1. 学業と遊びにおいて注意力散漫を認める; 2. 詳細に注目できず、ケアレスミスが多発する; 3. 話しかけられたときに聞いていない; 4. 指導に従うことや仕事を完遂することが難しい; 5. 仕事を完遂するために必要な持ち物をなくす; 6. 忘れたり、気が逸れたりする
②過活動性/衝動性
1. そわそわする; 2. 教室で席を立つ; 3. 不適切に走り廻る; 4. 静かに遊べない; 5. 過度に話す; 6. 相手の番にまてない; 7. 他人を邪魔する
*治療
①非薬物療法: 初回治療は薬物治療ではなく行動療法などを施行する。砂糖や食品添加物は病因とは考えない。
②薬物療法:
1. 精神刺激薬: メチルフェニデイト(Ritalin), デキストロアンフェタミン(Dexedrine), デキストロアンフェタミンとアンフェタミンの混合剤(Adderall), アトモキセチン(Strattera)、ペモリン(Cylert)
→副作用: 不眠、イライラ、食欲低下、チック、成長速度低下(治療中止後に回復する)
2. 抗うつ薬(SSRI, nortriptyline, bupropion)、α2アゴニスト(クロニジンなど)
<広汎性発達障害 pervasive developmental disorders PDD>
*概説
①社会性、コミュニケーション能力、行動における成長遅滞を呈する疾患群である; 自閉症、アスペルガー、小児期崩壊性疾患(Child hood dis integrative disorder、Rett症候群)
②男児に多く、症状の強度やIQ値は疾患ごとに大きく異なる
*Key Fact: PDDを見たら、TSやFragileXなどの先天的疾患を考慮すること
*病歴/身体所見
①3歳までに、活動や興味の対象が限定的で、社会性とコミュニケーション能力に乏しいという特徴現れる
②社会行動の発達障害を認める(social smile, eye contactなど)、人間関係に興味を持たない
③話し言葉の発達が遅れるもしくは欠如する
④話し方や身振りのステレオタイプがある(hand flappingなど)、興味が限定的である(ある物のパーツなど)
*PDDのタイプ
①自閉症
重度の言語と認知を伴った社会性とコミュニケーション能力の障害(impair)を認める。また、特徴的な限定的な行動の反復を認める。
②アスペルガー症候群
言語と認知の遅れを伴わない自閉症
③Rett症候群
遺伝性の女性における神経変性疾患。生後5か月までは正常に発達するが、それ以降、言語・頭の成長・cordinationなどに進行性の障害を認める。
④CDD小児期崩壊症候群
2歳まで正常な発達を認めた後、重篤な発達退行を認める。(言語、運動擬術、社会擬術、膀胱・腸管運動・遊び)
*治療
①集中的な(intensive)特殊教育、行動療法(management=特殊療法)、症状志向性薬物療法(攻撃性に対する神経抑制薬投与、ステレオタイプ行動に対するSSRI投与)
②家族療法とカウンセリングが必須である。
<Disruptive behavioral disorders破壊的行動障害>
*概説:反抗挑戦性障害oppositional defiant disorderや行為障害conduct disorderなどを含む。
*病歴/身体所見
①反抗挑戦性障害oppositional defiant disorder×
6か月以上にわたり、権力者に対して、否定的、挑戦的defiant、反抗的disobedientで敵対的な態度をとる。行為障害に進行することがある。
*治療
個人療法(individual therapy), 家族療法
②行為障害conduct disorder:
1年以上ににわたり、他人の基本的人権や年齢に相じた社会規範やルールを持続的に迫害し続ける。攻撃的な行動をとる(レイプ、強盗、動物虐待など)。成年期に反社会的人格障害に進行する。
*Key Fact: “C”onduct dis order=”C”hildren, “A”ntisocial=”A”dult
<Mental Retardation>
男性であること、染色体異常があること、先天的な感染があること、催奇形物質、代謝異常、妊娠期のalcoholや違法薬物の使用との関連がある。
*病歴/身体所見
×①18歳以下に発症し、IQ<70で適応機能(衛生、社会スキル)の欠陥を認める。
②重症度分類
Mild | IQ: 50~70 |
Moderate | IQ: 35~50 |
Severe | IQ: 20~35 |
Profound | IQ: ~20 |
*治療
①1次予防
発達遅滞の原因となることについて教育史、周産期に母親に最適なスクリーニングを施行する。
②治療
家族相談と家族支持。スピーチ及び言語療法、作業療法、理学療法、学習補助、社会スキルのトレーニング
<Tourette’s syndrome>
*概説
①男性に多くみられ、遺伝性の傾向を示す
×②ADHD、学習障害、OCDと関連がある。
*病歴/身体所見
①18歳になる前に発症し、
②1年以上にわたり、多発する運動チックと言語チックを認め、社会生活や職業活動に障害を認める。
*治療
①薬物療法
抗ドーパミン薬(ハロペリドール、ピモジド)もしくは、クロニジン
②その他
行動療法とカウンセリング→社会適合性と協調行動獲得に有益
§Miscellaneous Disordersその他
<Substance abuse/dependence>
(1)Substance abuse: 1個以上の症状を一年以内にみとめる
①仕事や学校や家で責任を果たせなくなる
②危険な状態で薬物を使用する(飲酒運転、中毒状態で運転)
③薬物の使用中に法律違反を起こす
④薬物のせいで、繰り返し社会的、対人的interpersonal問題を起こしているにも関わらず、使用を続ける(薬物使用に関する配偶者との議論)
(2)Substance dependence: 3個以上の症状が1年以内に認める
①耐性ができており、=直接作用を得るために過剰な量の薬物を摂取する
②薬物をとらないときに退薬症状を認める
③薬物の限量や禁止に失敗する
④薬物を得るために長時間かける(錠剤を得るために沢山の医師に回る)
⑤生活動作life activitiesから孤立する
⑥意図しているよりも多量の薬物を摂取してしまう
⑦薬物のせいで、繰り返し社会的、対人的interpersonal問題を起こしているにも関わらず、使用を続ける
*語呂: WITHDraw IT 3個以上/7を1年以内に認める
W: withdrawal
I: Interest or Important activities given up or reduced
T: Tolerance
H: Harm(Physical and psychosocial) with continued use
D: Desire to cut down/ control
I: Intended time/ amount exceeded
T: Time spent obtaining/ using the substance is↑(life activities↓)
*診断/治療
①患者本人は薬物使用を否定したり、少なく宣告したりする。そのため家族や友達からも情報を求める必要がある。
②尿中や血中の薬物をスクリーニングし、LFTs(肝機能検査)と血中エタノールレベルも検査する。
*薬物乱用の徴候と症状
Drugs | 依存 | 耐性 | Intoxication | Withdrawal |
精神 | 身体 |
Alcohol | +++ | ++ | ++ | 脱抑制、感情不安定、不明瞭スピーチ、失調、興奮、失神、幻覚 記憶障害、判断障害、昏迷 | ①1~2日: 早期離脱症候群 不安、焦燥、振戦、発汗、BT↑、BP↑ ②2~3日: 振戦せん妄(重症) 振戦++、せん妄(意識↓、興奮、幻覚)、発汗、BT↑、BP↑ |
Opioids | +++ | +++ | +++ | ①急性: 多幸、陶酔感、呼吸抑制、縮瞳 ②慢性: 便秘、栄養↓ ③ナロキソン、ナルトキソンが拮抗薬 ④オピオイド再開する前にはアンタゴニスト(ナロキソンなど)がウォッシュアウトされていること確認 | ①自律神経の嵐(鼻汁、くしゃみ、流涙、嘔吐、下痢、散瞳など) ②オピオイドの退薬症状は、死には至らず、ケイレンモないが全身痛が生じる。 |
Barbiturates | ++ | +++ | ++ | 意欲、認知力の低下、構音障害、眼振、高度では呼吸抑制(safety marginが狭い) | 痙攣発作、不安、せん妄 ⇒致死的心血管系collapse |
Benzodiazepine | ± | + | ± | 意欲、認知力の低下、構音障害、眼振、高度では呼吸抑制(軽度) ⇒高齢者の不眠には使用を避ける∵low doseでも逆説的興奮が生じうるから | 痙攣発作、不安、せん妄 ⇒頻脈、死 |
Amphetamines | +++ | - | ++ | ①統合失調症に似るが、疎通性は保たれ幻覚妄想が場面的 ②交感神経症状: 散瞳、頻脈、ケイレン、発熱、発汗、不安、狭心症 ③ハロペリドールを重度の興奮に投与し、症状をターゲットとした投薬も行う(antiemetics, NSAIDS) | Pos use “crash”: 疲労感、不快な夢、不眠・過眠、食欲亢進、精神運動制止、興奮 |
Cocaine | +++ | - | - | ①多幸、陶酔感 ⇒不安、幻覚(cocaine bug)、散瞳、血圧↑、sudden death、胸痛(虚血による) ②ハロペリドールを重度の興奮に投与する。高血圧のコントロールも共に行うこと。 | Post use “crash” : 疲労感、不快な夢、不眠・過眠、食欲亢進、精神運動制止、興奮 |
PCP | | | | ①攻撃的、反抗的、垂直/水平眼振 ②重度の興奮に対してBDZやハロペリドールを投与する ③尿の酸性化、胃洗浄⇒体内からの排泄↑ | GItractから何度も再吸収されるので、中毒症状が何度も繰り返す ⇒突然の暴力性 |
LSD | + | - | + | ①不安、鬱状態、幻覚、妄想、フラッシュバッグ、散瞳、発汗 ⇒感覚↑(色がより鮮やかに感じる) ②支持的カウンセリング ③精神症状に対して、抗精神病薬 ④不安にたいしてBDZ | None |
Marijuana | ++ | - | - | 酩酊状態、知覚異常(eg. Slowed sense of time)、幻覚、食欲亢進、口渇感 ⇒労働意欲低下、不安 | None |
Caffeine | | | | 落ち着きのなさ、不眠、利尿、筋肉のtwitching、不整脈、頻脈、紅潮 | 頭痛、昏迷、うつ、体重増加、渇望 |
Nicotine | | | | 落ち着きのなさ、不眠、不安、不整脈 | イライラ、頭痛、不安、体重増加、渇望、徐脈、集中↓ |
*Key Fact: pinpoint pupilがなくてもオピオイドは鑑別に入れること
一緒に他の薬を飲むことで正常瞳孔、散瞳を呈することあり
⇒呼吸数、注射瘢、呼吸音を検査すること
<Alcoholism>
*概説
①×男女比=4:1で21-34歳に好発する。(ただし女性の発症率も増加傾向にある)
②家族歴と関連がある
*病歴/身体所見
①表参考
②手掌の紅斑と毛細血管拡張も他の末端器官の徴候や症状とともにチェックする。
*診断
CAGE質問表を用いてスクリーニングする。退薬症状の証拠を得るためにバイタルサインをモニターする。ラボで肝機能、LDH、MCVを検査する。
C: Cut Down
A: annoyed
G: guilty about drinking
E: eye opener?
1個以上のイエスはアルコール中毒の存在を示唆する
*治療
①他の医学的疾患を否定する。電解質異常等。
②退薬症状に対してベンゾジアゼピン投与する。幻覚と精神症状に対しハロペリドールを投与する。
③マルチビタミンと葉酸を投与する。グルコース投与前にチアミンを投与する(Wernicke脳症予防)
④痙攣発作の既往があれば、抗痙攣薬投与する
⑤group療法、ジスルフィラム、ナルトレキソンはアルコール依存の患者に効果的な可能性がある。
⑥長期間のリハビリ(Alcoholic anonymous匿名性の互助会)
*合併症
①消化管出血: 胃潰瘍、静脈瘤、マロリー・ワイス
②膵炎、肝臓疾患、DTs(Delirium Tremens振戦せん妄)、幻覚、神経障害、心筋障害、外傷のリスク↑(硬膜下血腫など)
Cf. 振戦せん妄: アルコールの離脱症状の1つで、著明な自律神経機能亢進や幻覚などが症状
<Anorexia Nervosa>
*概説
①リスク因子: 女性、低い自尊心、高い社会経済的地位
②OCD、MDD、不安症、キャリア、趣味: モデル業、バレー、体操gymnastic、ランナーなどにも関係するとされる
*病歴/身体所見
以下のような診断項目がある
①BW<85%
②通常の体重を維持するのを拒絶する、体重が増えることに対する激しい恐怖心、ボディーイメージの崩壊(自身をデブと認識している)、無月経
③制限するか(calorie制限、過度な運動)、過食して出す(嘔吐、下剤、利尿薬)
④徴候と症状: 衰弱状態、BMI18以下、うぶ毛、乾いた肌、徐脈、傾眠、低血圧、寒がり、低体温(35度以下)
*診断
①BMI, CBC, 電解質, 内分泌, ECGをとる
②精神科疾患の評価→併存症の有無をみる
*治療
①まず、カロリーを監視し、不足した栄養素を補給し体重を安定させる
②次に体重増加に集中する
③栄養素を補給したり、水分を補給したり、電解質を補正する必要があれば入院させる
④医学的に安定した後に、個人療法・家族療法・グループ療法を開始する
→併存するdepressionや心配症も治療する
*合併症
①MVP、不整脈(電解質異常)、低血圧、徐脈、無月経(3回連続して)、ネフローゼ、骨粗鬆症、多発骨折、汎血球減少、甲状腺異常
②自殺と医学的合併症での死亡率>10%
*D/D Anorexia vs Bulimia
Variable | Anorexia Nervosa | Bulimia Nervosa |
Body image | Body imageの乱れがある →嘔吐や過度な運動 | Body imageの乱れがある →嘔吐や過度な運動 |
過食 | ± | ± |
体重 | 標準体重以下(15%以上) | 標準体重以上 |
病識 | 病気により苦悩しているわけではなく、治療困難 | 病気に悩まされていて、治療容易 |
治療 | ①カロリー摂取と体重増加をモニター、必要なら入院 ②精神療法 ③合併症の治療 | ①精神療法 ②±抗うつ薬 |
<Bulimia Nervosa>
*概説
ANより女性の間で良く認める。低い自尊心、気分障害、OCDと関連している。
*病歴/身体所見
診断基準は以下のとおりである
①標準体重または標準体重以上であり、3か月以上に渡り、少なくとも週に2回、過食と代償行為(purging, fasting)を繰り返している。
②患者は病識をもっており、その行動を隠したがる
③徴候: 1. 歯のenamel溶解 2. 巨大耳下腺 3. 手甲に吐きダコ
*治療
①精神療法: 行動とbody imageの修正
②抗うつ薬: うつ状態の患者にも、非うつ状態の患者にも効果的である
*合併症
Constitutional | Cardiac | GI | GU | Other |
衰弱cachexia 低体温 疲弊感 電解質×(K↓、pH異常) | 不整脈 突然死 低血圧 徐脈 QT延長 | 歯の溶解と腐食 腹痛 胃内容排出の遅れ | 無月経 ネフローゼ | 皮膚: 産毛↑ 血液: 顆粒球減少 神経: ケイレン 筋骨格: 骨粗鬆症、疲労骨折 |
Constitution: 体質
<Sexual Disorder>
*Sexual Changes with Aging 性機能の老化
①通常、加齢とともに性行為への興味は薄れていく
②男性: 女性よりオルガニズムまで多くの刺激が必要、オルガズムの激しさ↓、次のrefractory periodまで長い
③女性: 加齢とともにエストロゲン↓腟乾燥し粘膜菲薄化=性交時苦痛↑⇒ホルモン補充療法やクリームでの補助が必要
*Paraphilias性的倒錯
①概説×
異常な性的ファンタジー、衝動、行為に6か月以上に渡り没頭し、臨床的に重大な障害を人の生活に及ぼしていること。Pedophilia(小児愛)を含む。発症はほとんど男性に限られており、思春期か思春期前には始まっている。
②治療
1. insight oriented therapy 洞察療法と行動療法
2 抗アンドロゲン薬(Depo-Provera); hypersexual paraphilic activityに使われていた
*paraphiliasの特徴
Disorders | Clinical Manifestations |
Exhibitionism | 性器を他人に見せることで性的に興奮する |
Pedophilia | 子供と性行為をすることに興味をもったり実際にする |
Voyeurism(覗き) | 脱衣や性行為をしていると思われる人を覗く |
Fetism | 無機物を使って性的興奮を得る(しばし服) |
Transvetic fetishism | 女装、男装をして性的興奮を得る |
Frotteurism | 同意を得てない相手に性器を擦り付けることで性的興奮を得る |
Sexual sadism | 相手に罰を加えることで性的興奮を得る |
Sexual masochism | 傷つけられたり、脅しつけられたりすることで性的興奮を得る |
*Gender Identity Disorder 性同一性障害
①強く持続的なクロスジェンダーへの渇望をもち、現在割り当てられている性自体、もしくは、その性の役割に不快感を持っている。内性器の異常は伴わない。反対の性の服をきたことや、性ホルモンをとったことがある。性転換手術を試みている。
②女性よりも男性に多い障害である。うつ病、不安症、薬物乱用、人格障害と関連する。
③治療: 治療は困難である。
1. 文化的に受け入れられている行動を教育したり、併存症の治療をしたりする。
2. 性転換手術やホルモン補充療法を施行する
3. 精神療法は補助的効果をもつ
*Sexual dysfunction
1. 性的興奮、欲求、オーガズム、性行為中の痛みなどの問題を抱える
2. 有病率は30%(約1/3)である。1/3は身体的な原因があり、他の2/3は精神的な原因がある。
3. 治療: 状況に応じて施行する
a. 薬物: シルデナフィル(Viagra)、ブプロピオン(Wellbutrin)
b. 精神: 五感へ働きかける
<Sleep disorders>
アメリカ人の1/3は睡眠障害に罹患する。
Dyssomniaとは、睡眠リズムやパターンに何らかの乱れを生じている状態のことである。
リスク因子: 女性であること、精神的・医学的疾患が存在すること、薬物乱用、加齢
*KEY FACT: SEX SLEEP障害 1/3
*原発性不眠症
①一般人口の30%に影響する、精神的・身体的疾患によらない不眠のこと。不安により増悪し、思考が十分な睡眠をとることに支配されていることがある。
②診断: nonrestorative sleep、入眠障害や睡眠維持に問題を抱えており、1か月の間その症状が週に3回のペースで現れる。
③治療:
1st line: 睡眠環境を整える
2nd line: 薬物療法; 初めは2週間までの短い使用にとどめる
薬物: Diphenhydramine(Benadryl), Zolpidem(Ambien), Zaleplon(Sonata), Trazodone(Desyrel)
Drug(Diphenhydramine) for ZZZ(Zolpidem, Zaleplon, traZodone)
*Key Fact: 推奨される睡眠環境
①一定の睡眠サイクルを作る
②カフェイン摂取を抑える
③昼寝を避ける
④夕方に温かい風呂に入る
⑤ベッドは睡眠か、性行為をするための場所にする
⑥日中の早い時間に運動する
⑦リラックス技術
⑧寝る前に食べ過ぎない
*原発性過眠症
①診断: 1か月以上にわたり、日中または夜間に過度の眠気を感じており、その眠気が医学的疾患、精神科的疾患、薬物、睡眠環境、睡眠不足、ナルコレプシーによらないもの。
②治療:
1st line: アンフェタミンのような精神刺激薬
2nd line: 抗うつ薬(SSRIなど)
*ナルコレプシー
①人口の0.16%に影響する。一般的に30歳未満の人に発症する。あるタイプのナルコレプシーは遺伝する。
②診断:
1. 臨床徴候:
a. 少なくとも3ヵ月に渡り、過度の日中の眠気、REM sleep latencyの短期化
b. 睡眠発作は、典型的症状である
2. 特徴的な過度の眠気
a. cataplexy: 突然の筋緊張の低下
b. Hypnagogic hallucinations: 入眠時の幻覚
c. Hypnopompic hallucinations: 起床時の幻覚
d. 睡眠麻痺: 起床時の短期間のマヒ
③治療
計画的な昼寝と精神刺激薬
×CataplexyにはSSRIを投与する。
*睡眠時無呼吸症候群
①症状: 過剰な日中の眠気、睡眠の乱れ、SBP↑、肺高血圧、突然死(infantsとelderly)、頭痛、うつ病
②分類と鑑別点
| 呼吸中枢×(CSA) | 閉塞性×(OSA) |
特徴 | 朝の頭痛、夜間の複数回覚醒 | いびき リスク: 男性、肥満、上気道手術歴、鼻中隔の偏位、巨大口蓋垂、巨大舌、下顎後退(retrognathia) |
検査 | 呼吸運動正常⇒SpO2正常 | 呼吸運動低下⇒SpO2低下 |
治療 | Mechanical ventilation(BiPAP) | CPAP ①肥満の解消 ②小児→アデノイド切除 |
*Circadian rhythm sleep disorder
①概説:
1. 求めている睡眠時間と実際に取れる睡眠時間のずれが生じる疾患群
2. サブタイプ: jet-lag, shift-work type, delayed sleep phase type, unspecified
②治療:
1. jet-lag type(時差ボケ): 2-7日で自然寛解することが多い
2. 交替勤務制: 光線療法
×3. 薬物療法: oral melatonin; 睡眠の5時間半前に投与する
<Somatoform and Factitious Disorders>
*概説: 医学的に予見できないような身体症状を呈する
①Somatoform disorder(そのまんま ディスオーダー)
患者は症状に関する意識的なコントロールをしない
②Factitious disorder虚偽性障害
症状を偽ったり、自らを傷つけることでシックロールを演じる
女性に多い
③ミュンヒハウゼン症候群: 慢性重症のものを特に呼ぶ
身体所見と症状を偽り、不必要な検査や手術を受けようとする
医療関係者に多い
④代理母ミュンヒハウゼン症候群
誰かを病気にして、心配する介護者を演じるのを楽しむ
*Key Fact: D/D Factitious vs Malingering
Conscious and intentional processがあるかどうかで鑑別する
Factitiousにはない
*Somatoform disorders
疾患 | 臨床症状、疫学 |
Somatization disorder | ①複数の慢性的な身体症状が異なった臓器系から生じる: GI、生殖期(月経不順)、神経系(異常知覚)そして痛みの訴えなど ②医学的検索、手術; 重大な機能障害 ③男女比=1:20 30歳以下での発症が多い ④コンサルタントや専門家とコミュニケーションする特定の介護者と、定期的なアポをとる |
Conversion disorder | ①医学的に予見できない経過で、症状もしくは自発的な運動機能や感覚機能の欠損を認める ②ストレスや激しい感情と時間的に密接な関係がある ③若い女性、低いSES、低学歴がリスク ④自然寛解するが、精神療法が効果的 |
Hypochondriasis | ①医学的保証にも関わらず、重大な疾患なのではないかとの恐怖に支配される⇒重大な社会的障害をもたらしている ②しばし、身体疾患の既往がある:不安不安 ③男女比=1:1、成人で発症する ④グループ療法と、介護者とアポを取り、定期的に面会をする |
Body dysmorphic disorder | ①醜形なのではないかという恐怖に支配されている ②歯科医や形成外科医を頻繁に訪れる ③女性がやや多い。うつ病と関係する。 ④SSRIが有効なことがある。 |
Somatoform pain disorder | ①痛みの強さや詳細が、内科的過程と一致していない ②精神的要因と密接な時間関係がある ③女性により多く、発症のピークは40-50歳である。うつ病と関係する。 ④治療 1. リハビリ(eg. 理学療法) 2. 精神療法、行動療法⇒痛み止めは効果がないこと多い 3. 薬物: TCA、SNRIが有効 |
<Sexual and Physical abuse>
①概説
被害者の多くは35歳以下の女性である。Riskは以下の通り。
1. 家庭不和marital discordの経験がある
2. 薬物乱用者
3. 薬物乱用している夫を持つ
4.妊婦、SESの低い人(差し押さえ命令を受けている等)
⇒子供の時虐待を受けた経験がある人は、大人でも虐待を受けやすい
*Key Fact
Sexual abuserの多くは、男性で、被害者をよく知っている人が多い(特に家族)
②病歴/身体所見
1. 多数の身体的不調や説明できない治療の遅れたキズを有しており、しばしERに訪問する。アイコンタクトを避ける傾向がある。
2. 子供は早熟の性的行動を示すことがあり、生殖期やアナルのtrauma、STD、UTI、精神疾患を持っている
3. パートナーが示す手がかり: 患者への質問に答える、診察室から離れることを拒否する
③治療
1. 患者の家庭内での安全性と、頼れる親類を調べる
2. 医学的治療を施し、感情的な支援とカウンセリングを提供する
3. 支援施設に関する情報を提供し、適切な方法で紹介する
4. documentationは必要不可欠である
<Suicidality>
①概説: 年間3万人が自殺で命を落としており、アメリカで8番目に多い死因である。17-20分に1人が死んでいる計算となる。
②リスク因子
語呂: SADPERSONS
S: sex; male
A: age; >45
D: Depression
P: previous attempt/Famili history
E: Ethanol/ substance abuse
R: rational thought
S: Sickness (chronic illness)/ stressor
O: organized plan/access to wepons
N: No spouse
S: Social support lacking
+family history, recent severe stressors
*Key Fact
Suicideは15-24歳では3番目に多い死因である
③診断
1. 精神科的評価をする
2. 家族歴、企図歴、死に対する両価性(ambivalence)、hopelessnessを聞く
3. 希死念慮、企図、計画、利用可能な手段などを直接聞く
④治療
1. 希死念慮の強い患者は、患者の意志に関わらず入院させる必要がある
2. 抗うつ薬処方開始後は自殺率↑∵自殺するエネルギーが戻るから