§IgG4関連疾患
IgG4-RDは日本で確立されたステロイドに反応する良性疾患であり、少なくとも自己免疫性膵炎はIgG4RDの一部である
IgG4-RDは炎症病態とはいえず、不明熱にもなり難いが、他臓器病変+高ガンマグロブリン血症を呈する疾患。
(1)概説
壮高年男性に多く、抗核抗体陰性、膠原病と関係しない
各臓器の腫瘤にIgG4酸性形質細胞の浸潤がある
○IgG4とは?
慢性の抗原刺激を受けた時に生じる
補体結合性抗体による免疫複合体性炎症に拮抗
IgEによるアレルギ―性障害に拮抗する
アレルギー患者ないし、IgE高値例に高IgG4がしばし認められる
⇒CSSでもIgG4↑、疾患活動性と相関
○IgG4-RDとは原則としてCRP0であることが初期判断に重要
⇒熱性病態でもないが炎症性腹部大動脈瘤は例外
(2)IgG4-RDに先立って知られていた疾患群
1. 自己免疫性膵炎/ Autoimmune pancreatitis
浸潤形質細胞はIgG4陽性細胞の比率が高い
多くは閉塞性黄疸または糖尿病によって気づかれ、膵腫大・膵管狭窄の画像をみてかつては膵腫瘍として手術されたが巣状のリンパ球・形質細胞浸潤、それを取り囲む線維化
⇒PSL 30-40mg/dayを著効して、腫大・黄疸・糖尿病が改善する
2. Mikulicz病
唾液腺と涙腺の腫大病変
Sjogren症候群と混同されたが、分泌低下は乏しく、抗SSA抗体陰性で、ステロイドに反応する点でSjogren症候群と異なる。全く別疾患であるサルコイドーシスの唾液腺腫脹まで含めてMikulicz症候群と言われたこともある。
3. 後腹膜線維症/ retroperitoneal fibrosis
後腹膜腔で炎症浸潤細胞と線維化を伴う軟部組織が増生し、血管や尿管を取り巻き、臨床的に疼痛ないし、炎症性腹部大動脈注、水腎症・腎後性腎不全を呈する
⇒多くは血清IgG4高値であることがわかった
4. IgG4-RKD
*後腹膜線維症、腫瘤による腎盂・尿管の圧迫⇒水腎症、腎後性腎不全
*尿細管間質性腎炎
尿細管~間質に巣状のリンパ球・形質細胞、それを取りまく線維化
IgG4陽性形質細胞が多い、好酸球の浸潤も見られる
まとめ: 腫瘤性病変と高γグロブリン血症を見た際にはIgG4-RDを疑うべき
臓器別の病態名
頭頸部; 肥厚性硬膜炎(脳神経の圧迫障害、頭痛)。下垂体縁、炎症性偽腫瘍、耳下腺炎、涙腺炎
胸・腹; リンパ節炎、間質性肺炎、肺・縱隔腫瘤、自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、炎症性腹部大動脈瘤
腎・泌尿器; 尿細管間質性腎炎、水腎症、前立腺炎
(3)症状
圧迫症状(膵管、胆管、尿管、腎、神経、血管)、糖尿病(←膵炎)
例えば、軽い腹痛、黄疸、腎不全、脳神経圧迫症状、頭痛で受診する
Ex: 嗄声・嚥下障害で発症し、脳神経圧迫の原因となるpachymeningitisを認めた。珍しい気管支粘膜の腫瘤性病変も見られ、所見はすべてステロイド治療で改善したが嗄声は遷延した。
(4)検査
○血液
血清IgG高胝
IgG4>135mg/dl
IgG4/IgG index>8%
ときに好酸球増加、血清IgE高値、通常CRP0
○画像検査
肺(寒湿、儒喀の浸潤影または腫瘤影)、腹部・後腹膜腔(腫瘤、大動脈瘤)、頭部(脳硬膜粃糠、大腦のpseudotumor, 下垂体炎)
(5)治療
PSL:0.6mg/kg/day
一般に著効するが線維化病変には効きにくい
線維化した腫瘤の尿管圧迫による腎障害は回復しにくいこともある
自己免疫性膵炎によるDMもすぐに治るわけではない
高齢者が多いので、感染及び長期的副作用に気を遣う、減量中の再然も多い
(6)診断基準
癌・悪性リンパ腫、WG、Sarcoidosis, CSSなどを除外すべき
炎症性大動脈瘤を除いてCRP上昇は認めにくい
1. 特徴的な、びまん性または局所性の腫大病変が単発または多発
2. 血清IgG4>135mg/dL
3. 生検像
①明瞭なリンパ球。形質細胞浸潤と線維化像
②浸潤形質細胞; IgG4陽性細胞/IgG陽性細胞比>40%かつ
強拡大視野にIgG4陽性形質細胞>10
診断: 1+2+3: 確実、1+3: 多分IgG-RD、1+2: IgG-RDの可能性あり
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